畑の遊び  中川悦子


森さんの推薦の本 松田道雄「育児の百科」を読みながら、秋山史子さんと
森さんの家で保育の勉強をしていた頃に書いたものです。



 <本からの抜粋>
 子どものあそびは連帯のなかから生まれるものです。連帯さえあれば、遊び道具は簡単なものでいいのです。道具がなくてもあそべます。

 精巧なおもちゃは、ひとりぼっちの子どもをお守りするためのもので、子どもの連帯をかえってさまたげるためにあるようなもののようです。
 精巧なおもちゃでは連帯もそだちませんが、創意はさらにそだちません。あそび方が決っていて、それ以外のことをするとおもちゃはこわれます。
岩波書店刊  松田道雄著 「自由を子どもに」より

  自由にかけまわれる広い場所で、好きな友達と遊べるときは、棒切れでも、石ころでも一本の綱でも、いいおもちゃになる。おもちゃが単純であるほど、あそびのなかで友情は大きい役割をしめられる。
岩波書店刊   松田道雄著 「育児の百科」より


この本を読んでいた頃、とてもぴったりとした場面がありましたので、書きとめておきました。以下はその記録です。

<光が丘公園へ>
森かおるくん(長男4歳)、たかしくん(次男1歳)と我が家のゆうき(3歳半)を連れてあそびに行きました。公園のアスレチックにはお母さんと一緒に2〜3歳くらいの子どもが数人あそびにきていました。

その中に自転車やクレーン車など色どりの良いおもちゃを持って来て砂場において遊んでいる2歳くらいの男の子がいました。

かおるくんとゆうきはそのおもちゃを見つけて素早く手にして貸してもらいました。たかしくんも手にしたくて、声をだして要求しています。「これゆうくんがつかっているからだめ一」「かおるくんが見つけたからだめ−」と2人はしっかりと自分が手にしたおもちゃを離しません。自分のもっているおもちゃを他者にとられまいとするのであそびが個々になってしまいました。

<今日は畑に行ってみようか>
かおるくん(4歳3ヶ月)たかしくん(1歳7ヶ月)ゆうき(3歳9ヶ月)3人と一緒に畑に行きました。

畑には、いろいろな野菜が今盛んに実っています。そしてその横には、野菜を植えずに土だけの空間を残してあります。(子ども達がここで遊べるようにと、森さんが残しておいてくれたスぺースです)

野菜の植えてある隙間には、所々に雑草も顔をだしています。土だけの空間が、今日この3人の遊び場となりました。そこには小さい穴がいくつもあってトンネルのようにつながっています。これは「お父さんが作った!」とかおるくんが話してくれました。

かおるくんはハダシになって、穴の上のちょっと遠くから穴をめがけてピョーンと飛び降ります。見事に穴に入りました。それを見ていたゆうきも同じようにやってみます。最初は穴に飛び込むのができなかったのですが、3回目にはゆうきもその小さな穴に飛んで入れました。そして2人で何度も何度もピョンピョン飛んでいました。ズボンのおしりの部分が土で真っ黒になっています。

2人のそんな様子をたかしくんはジーッと立って見ています。そして声をたてて笑っています。しばらくするとたかしくんもその穴の中に入りたいという要求が出てきました。「たかしくん、入ってごらん!」と言うと自分で入ることが出来ました。自分で足を入れた時の嬉しそうな顔! ‥体をゆすぶって喜んでいます。

3人は同じあそびでしっかりとつながっていました。

私は畑の周りの雑草を取りながら、そんな3人の遊んでいる様子を見ていました。しばらくしてから、私が雑草をとっている様子を見て、「根っこから取らないと又すぐ生えてくるからね。」とかおるくんが教えてくれました。そして穴の飛び込みを充分にやったところで、かおるくんもゆうきも今度は雑草を取り始めたのです。

かおるくんはゆうきに「ここは畑だから取らないんだよ、これはいいよ−。」と畑の野菜と雑草の生えているところを説明しています。ゆうきもかおるくんのはなしをよく聞いていました。雑草を手にしたゆうきは、「やさいだ−」といって嬉しそうにします。それを聞いて、かおるくんは早速「いらっしゃい、いらっしゃいーッ」と掛け声がはずんできました。「野菜くださ−い!」と私が言うと、2人は代わる代わるに雑草を取ってきました。

そしてその雑草を細かくちぎって土をかぶせて料理が一品できあがりました。


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